バンド復活装置を手に入れて……

 

 もし僕に発明の才能があったなら、まず初めにすることは「バンド復活装置」を作ってこのバンドを復活させることだと思う。「Screaming Maldini」だ。

 

スクリーミング・マルディニ(SCREAMING MALDINI)

 イングランド、シェフィールド出身の6人組で、2014年に解散してしまった。僕が彼らを知ったのは解散してからずっと後なのだけど、……そのときには解散してとっくにたったバンドを好きになるときの、あの、幸福は限られていると感じながら音源を大事に聴いていくときの感覚をスーパーカーぶりに味わった。

 

 Screaming Maldiniの音楽について僕の思っていることをとりあえず箇条書きで挙げていこう。

・乱雑だけどその奥にはしっかりとした音楽の知識が感じられる。(ような気がする)
・同時に鳴っている音の重なりが綺麗。0.5秒ごとにスライスしてもそれぞれ聞いていられる音楽だと思う。
変拍子の曲が多いけど、僕が勝手に変拍子に対して抱いている「無機質」「インテリ」といったイメージはなく、むしろ情熱的。
・祝祭の感覚があって、聞いていて気分が上がる。
・音数が多いのに、それがもさっとして聞こえず、全体として聴こえるものがはっきりしている。

 

 とくにこの「Life in Glorious Stereo」は個人的に最も好きなもののひとつ。上にあげたような特徴が、この一曲で感じてもらえるんじゃないでしょうか。最も好きっていうのはScreaming Maldiniのなかでって意味ではなく、世界の全事象のなかで、っていう意味です。

 

 「Life in Glorious Stereo」に並んで大きな存在なのがこの「The Awakening」。子供の風船パーティーと大人の熱気球パーティーの不思議な絡み合いを題材にしたミュージックビデオにツインボーカルの掛け合いを中心にリズムの変化やきらびやかな音色で飾りつけた楽曲、……総合的なメディアアートとしてとても良い出来で、見るたびにすこし涙ぐんでしまう。

 

 なんと、渋谷のO-NESTで来日ライブまでやっていたらしい。この人たちって実際、ぜんぜん有名なバンドではないので、こうなることはかなりの奇跡である。僕は正直、あまり家以外の場所で音楽を聴くのが好きではないのでライブにはまあいかないんだけど、もしこの回に行く物理的可能性があったなら、万難を排して行ったと思う。

 

 バンド復活装置でScreaming Maldiniを無事復活させることができたとしても、このような来日ライブが行われる可能性はあまりない。ましてや、いまはこういった世界情勢なのだし。

 

 ……それを考えると、発明の才に目覚めたときに作るべきなのは、バンド復活装置よりタイムマシンとかかもしれない。そっちのほうがほかの人にとっても役に立って、つぶしがきくし。