「何もしないのが一番の金策だった」~読むものが無限にある 4~

 

 「ギャンブルで作った借金と向き合うマンガ まだ「そこ」にいる人へ」というサイトに掲載されている2つのギャンブル依存マンガを読んで、とても面白かった。

 

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何度もギャンブル借金を繰り返した作者の経験を基に描きました。自分自身いつまでも忘れないために。同じ境遇の方に届くと幸いです。

【作者:ナツジ】40代サラリーマン妻子あり。20代でパチスロにはまりアコムアイフル・プロミス・モビット、、、全15社から計1080万の借金をし返済。2019年10月完済しました。

 

 昔の記事(これ、とかこれ)でもその話題を出したことがあるのだけど、僕自身はギャンブルとは浅い関係しかこれまで持ってこなかった。なので、ギャンブル好きなひとたちの、ギャンブルを好き、というか、「それをするしかない」みたいな切な感情が、心から理解できていたとはいえないのだけど、このWebマンガ作品を読んで、なんとなく、ちょっと、箱の中身はなんでしょうゲーム程度には理解できたような気がする。

 リアルな触感に触れて、ぞわっとして、全体像は分からないけれど、知っている症の名前と手で触れたものを一致させることができた、……というくらいの意味で。

 

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 「パチンコ・パチスロ」「消費者金融」「借金で借金を返す生活」「家族とのトラブル」、……この苦しい状態に陥ったひとであることの感じが丁寧に描かれている。誇張だったり自己憐憫だったり、このマンガをバズらせて一攫千金!って狙いだったりが忍び込みそうな題材なのだけど、それがなく、ある人々の生の手触りを描いた作品としてとても質が高い。

 

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 借金が限度額に迫って来てやばい、……となったときになぜか何十万も勝てちゃって安心するところとか、とつぜん融資を打ち切られカードも失って途方にくれるところとか、消費者金融の借金を返しきれなくてお金を無心するときそれまでとは違う質のダメージを受けているところとか、過払い金請求を個人で行うために履歴を整理してて「なんでこんなに借金をしたんだ」と自分で衝撃を受けているところとか、リアルなエピソードがリアルな手触りで描かれている。

 

 「何もしないのが一番の金策だった」も、言葉だけ取りだせば、僕はそのことを強く知っていて基本的にはつねになにもしていないため、ちょっとした面白シーンのようにも取れるんだけど、マンガの流れのなかでこのセリフが出てくると、そのときにはとても重みが感じられる。