モウリーニョ・プロット~20/21シーズンプレミアリーグ第9節 トッテナムvsマンチェスター・シティ~

 

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 観ていてうれしくなる試合だった。プレミアリーグのBIG2の一角としてここ数年君臨しつつも、今年は「サイクルの終わり」をささやかれているマンチェスター・シティを無観客のホームグランドに迎えた、トッテナム・ホットスパーの試合。

 ここ数年この両チームの戦いは、整理されたボール保持で攻め立てるマンチェスター・シティとそれを受けつつカウンターを狙うトッテナム、という構図で固定されている。

 

 めちゃくちゃ攻め込まれ、それをぎりぎりで防ぐ。たまにあるカウンターチャンスを祈りながら見つける。……そんな心臓に悪い試合が続いていたのだけれど、意外にも戦績はそんなに悪くはない。シティ側からみてもトッテナムはそれなりに嫌な相手として思われているのではないかと思う。

 

 結果はこのようになりました。シティにボールの支配権を渡し、自陣ゴール近くで6人+4人の2ラインを引く。シティはブロックの外側でボールを保持するものの、6バックと対峙するアタッカーに有効なボールを供給できない。

 欧州サッカー界隈では「(ゴール前に)バスを停める」という(ポジティブな含意はあまりない)表現をする守りかただ。

 

 ただ守るだけではなく、そこからゴールを奪うイメージがあり、それができるメンバーを揃えているのが今年のスパーズの良いところだと思う。

 

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 深く攻め込まれたときに、自陣のゴール前に選手が6人並ぶのはサッカーではそこまで珍しいことではない。ただ、その場合、下がって6バックを形成するのはもともとの4バックに加えて、(チームが押し込んだ場合、攻撃のために上がってくることの多い)相手SBと対面することになるこちらのSH(ここでは7番と23番の選手)になることが多い。これだと本来のアタッカーが自陣端っこの深い位置まで戻らされてしまうので、ボールを奪回してもなかなかカウンターにはならない。

 

 今回のスパーズで最終ラインに下がってスペースを埋めていたのはホイビュルグとシソコで、その前には、カウンターの中継役をこなせるケイン、エンドンベレ、長い距離を走ってフィニッシュできるソン、ベルフワインが残っていた。これなら点は取れるのである。

 こういう構図を作るため、上手くポジションを取ってスペースを埋めた後ろ6人と、その結果生まれたすくないチャンスを確実に決めた前の4人、全員が輝いていたすばらしいゲームだったと思う。

 

良かった選手:

セルジュ・オーリエ - 攻撃時にはそこまで使われる場面はなかったけど、守備の判断が良かった。「これが安定して出せたら…」とみんなに言われる、良いときのオーリエでしたね。

トビー・アルデルヴァイレルド - 攻撃をせき止める最後の門番であり、ビルドアップの最終意思決定所だったが、どちらも適切な判断を続けた。

カイル・ウォーカー - シティの右サイドでスパーズのカウンターを完全にシャットアウトしていた。応援している身としてはいらいらしたけど、ふりかえってみるとすごいと言うしかない。