農民!

 

 新しくなにか好きなものを、3日に1回くらい見つけて息継ぎができている時期と、なにを見てもなにを聞いても(理性ではよいとわかっていても)体の反応として「好き!」とは思えなくなる時期がある。

 いまは前者の時期なのでハッピーだけど、後者の時期ももちろんあり、年を取るにつれて感受性は鈍る一方という通説を信用するならば後者の時期の占める割合のほうがこれからはおおきくなっていくということを考えると、先取りしてブルーになってしまう。

 

 そういうアンビヴァレントな気分のときに聴くと申し分ないのが、最近とてもはまっているバンド、Los Campesinos!の曲である。

 ウェールズの首都、カーディフ出身のバンドで、オカモトズのようにメンバー全員が同じ姓を名乗っている。バンド名をびっくりして終わってみせたりしていることもあり、遊び心とおどけた雰囲気が伝わるグループだ。

 

 曲はポップなんだけど同時に不思議な奇妙さがあって、前面に押し出されているのは祝祭感。人生に抱えている悲しさや辛さが、ハイで明るい、偶発的な祝い事のような形をとって現れているような感覚を与える作品がジャンルを問わず好きで、個人的なそういう部分にグサッと刺さった音楽だった。

 

 この曲なども、……ちょっと英語が僕の手に負える範囲を超えていてわからない*1のだけど、タイトルとか漏れ聞こえてくる単語の感じから想像するに、けっこう切ない歌なんじゃないでしょうか。勝手に雰囲気でエモーションを想像しているのだけど、それの裏を突くようなPVと合わせて泣ける曲だった。

 

 「Avocado, Baby」はこれまで紹介した2曲よりはやや角がきりっとしている歌ですが、曲のどの部分でも引っ張ってくれる感情的なポップさと、サビの祝祭感はそのまま。

 そもそも人数が多く、いろいろな音が鳴っているのだけど、アンサンブルとして調和しているというよりは、それぞれで個性的なフレーズ・音色を惜しまず使っていって、そのカオスのなかから来る多様感、でも、かといって混沌そのものを売りにしようとしているほど混沌としているわけではない形にはなっている、……みたいなところが聞きどころなバンドだと思う。

 

 このバンドでいちばん人口に膾炙している曲がおそらくこちら。……これがストリームで流れてきたときに、立ち止まってこのバンドが好きになった。

 何段階にも盛り上がるイントロを終えて、言葉を投げつけるようなメロディ、……サビの前には憎たらしいほど効いているスローダウン部分があって、はやいリフレインの後ろから「It's you, it's me, And there's dancing」と投げつけるように歌うサビは見事で傑作としか言いようがない。

*1:なんかアートワークとか曲の表面的な感じとは裏腹にけっこう文学的なことを言っているのではないかと思うけれど、本当にまったくわからない。