ほんわかnote

 

 ほんわかさん、という漫画家・イラストレーターがいて、noteのページで漫画を公開している。それがとてもすごい素晴らしくものすごい出来だ。

 

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おもちゃのこわし方|ほんわか|note

 まずは代表的な名作、「おもちゃのこわし方」からはじめよう。人間の攻撃性を受け止めるための人型ロボットが開発された社会が舞台だが、社会の進歩とともに人間は新しい倫理を生み出すようにできている。人型のロボットを破壊するのが残酷である、という主張が現れた結果、

 

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 こうなった。皮肉であるようにも見えるし、批評的であるようにも見えるし、そのどちらでもなく、単に性癖を満たすための手っ取り早い舞台設定であるようにも見える。このどこまで真面目に受け取るべきかわからない、読者をちょっと宙吊りにするような設定や展開はほかの作品でも有効に使われていて、ほんわかさんという作家のひとつのシグネチャーになっている。

 

 この「壊されたいロボ」設定という、けっこう位置エネルギーが高い状態からお話ははじまり、ちょっとした物語的なひねりをくわえつつ、きれいに結末へたどり着く。設定の面白さと、そのあとのひねり。裏づけをもって提示される価値観の転倒。それにかわいい系の絵柄と、見え隠れするフェチズム。それが素敵な作品だ。

 

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二足歩行|ほんわか|note

 「二足歩行」の主人公は、オーバードーズの結果、「人々が死にたがっていることが当たり前になっている世界」に来てしまう。お話自体はややウェルメイドなのだけど、奇妙な設定の世界のディテールの描写や、それを可能にする奇妙な想像力が、お話の分かりやすさを裏側から支えていて全体として大きなプラスにしている。

 

 

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赤い実はじけて汁が出た|ほんわか|note

 青年誌に不定期掲載されている内容薄めの、だけど傑作の雰囲気漫画のようなたたずまいを見せる「赤い実はじけて汁が出た」も素晴らしい。上記したふたつの漫画とは大きくテイストが異なるが、作者の持っているオリジナルな世界がうかがい知れるということは変わらない。

 

 設定の坂を転がっていくような推進力のあるお話だけじゃなく、こういう、静物を感覚の独特さを頼りにスケッチする感じのお話も書けるの隙が無い。

 

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もこもこビッグバン|ほんわか|note

 そして個人的に一番最高傑作だと考えているのがこちら。ゆるふわなタイトルに反して、文学的にいくらでも深読みできる謎のストーリー展開を持ち、その合間合間にナンセンスでかわいくてグロテスクでポップなギャグが差しはさまれる。衝撃を受けるのが不可避。ゆるふわ×SFのビジュアルも完璧だ。