勢いとそれを上回る力~セリエA第23節インテルvsミラン~

 

 セリエA*1の第23節、インテルナツィオナーレ・ミランACミランの試合を見た。ミラノに本拠地を置くふたつの強豪チームが争うこの試合は、「ミラノ・ダービー」という特別な名前で呼ばれている。

 

 あまり普段はセリエAを見ることはないので、それぞれのチームにどんな選手がいて、いまどんな状況なのかというのは風の噂ぐらいにしか知らない。

 インテルはいつになく好調で、トッテナムからエリクセンを獲得し、2トップのルカクラウタロ・マルティネスがかなり活躍している。ミランは世界の第一線からは退いていたズラタン・イブラヒモビッチを呼び戻した。…というくらいを知っていた。

 

 前半はミランが、インテル陣内に戦力を大投入してかなりテンションの高い攻撃を仕掛ける。インテルの前線が様子見?というか、あまり厳しい守備を仕掛けていなかったため、ミランのビルドアップメンバーは自由を享受。インテルのCB陣と駆け引きしながらここぞというタイミングでインテルDFとMFのあいだのスペースに降りてボールを捌くのがめちゃくちゃ上手いズラタン・イブラヒモビッチが作った起点から波状攻撃を仕掛ける。王が帰還した勢いのまま、ミランは前半で2-0のリードを奪う。

 気になったのはミランの左SHを務めていたアンテ・レビッチ。トップ下のチャルハノールが下りればそのスペースを埋めて中央に進出し、後方にいるテオ・エルナンデスインサイドを駆け上がればそれに合わせて左サイドに開いて攻撃の幅を作る。守備時は対面のカンドレーヴァとゴディンをひとりでケアしながら相手の攻撃の方向を中央へコントロールするなど、ずっと気の利いた動きを繰り返していてよかった。先制点も決めたしね。

 

 しかし、ハーフタイムを境に状況は一変。インテルは前線からの守備をさぼらずに敢行するようになり、ミランズラタンにいい感じでボールを当てることがめっきりできなくなる。ちょっと潮目が変わったな、という時間帯に、強いチームの「力」としかいえない形の攻撃で立て続けに2ゴールを奪って追いつき、試合をコントロールするインテル。そのままコーナーキックであっさり逆転して、試合終了間際には時間稼ぎのペナルティーアーク付近キープからインサイドに展開してそのままルカクがゴールするという完璧すぎる展開で試合を終える。インテルファンの酒はさぞおいしかっただろうし、ミラノファンは水を飲んでも苦かっただろう。

 

*1:イタリアのプロサッカーリーグ1部。「せりえ・あー」と発音する。