ヴィンテージではないが、それでも

 

 19/20シーズンプレミアリーグ第25節、トッテナム・ホットスパーvsマンチェスター・シティの試合を見た。

 

 ライバルのリヴァプールが強すぎるせいでなんとなく今季はしょんぼりしているように見えるマンチェスター・シティであるが、大工事の最中であるいまのトッテナムにとっては胸を借りに行く相手であることには変わりない。

 冬の移籍マーケットでオランダのPSVから購入したステーフェン・ベルフワインがいきなりスターティングメンバーで出場した。

 

 というわけでこのあとヒーローになるベルフワインさんに注目して見てしまうのだけど、攻守のポジショニングに関しては「そこでいいのか?」というようなところが目立った。

 スパーズが中盤でボールを保持して前を向いたとき、ベルフワインがかなり早い時点から中央にポジションをおり、左サイドへの展開ができずに攻撃のバリエーションが減ってしまうという場面がけっこうみられた。ベルフワインが空けたスペースを左サイドバックが使えればよいのだけど、最近使われているタンガンガはそういうタイプのサイドバックではない。

 

 守備時も、マッチアップするカイル・ウォーカーやデ・ブライネの動きを注意しているのかしていないのかよくわからないような、やや中盤に絞った位置、中途半端な高さのポジショニングをしていて、ベルフワインのサイドから簡単にボールを前進させられてしまっていた。

 

 いてほしいところにいないベルフワインの代わりに、アリが献身的に奔走。ディフェンスラインの選手+カバーリングに入るハリー・ウィンクスの頑張りによって、なんとかシティと戦える雰囲気ができていく。

 

 そこで35分ごろのPKのシーンを迎える。アグエロへのオーリエのタックルが、いちどはノーファウルと判定されるも、けっこう時間がたったあとVARが介入、巻き戻ってPKとなる。しかし最近のシティはPKに良い思い出がない。いまにもPKを外しそうな雰囲気のギュンドアンのキックを、ロリスがセーブするもそのこぼれ球に詰めていたスターリングと交錯、もう一回PKをとられてもおかしくない雰囲気だったけど、こちらはノーペナルティになった。ストレスのたまる判定の連続に、シティの選手もスパーズの選手も気が立って乱闘寸前になる。この危険な雰囲気のときにジンチェンコがもらったイエローカードが、ふりかえってみると勝利の最初の伏線だった。

 

 60分ごろにカウンターに単騎走ったウィンクスをジンチェンコが倒して二枚目のイエローカードで退場となる。その直後、ルーカス・モウラの浮き球のパスをベルフワインが胸トラップ→ボレーでゴールに叩き込む。そのあと、ソンが追加点を決めて2-0で勝利。

 

 ベルフワインが良いプレーをしていたかというととくにそうでもなかったと思うのだけど、加入したばかりの選手が一発を決めて、それでチームを勝利に導くというのはうますぎるシチュエーションである。深い味わいや趣きがあるプレーヤーもいいが、いまはそれよりも、もっと必要とされているものがある。