いちばんかっこいい元素名は

 

 皆さんは元素、好きですか? 僕はこういう、特徴的な名前がついているもののカタログ的な知識が大好きで、当然、元素も大好きだった。すべての元素をおぼえたのは、たしか中学生のころだったと思う*1。なんら外的な強制力があったわけではなかった。いまはもうなかなかそんな機会には巡りあえない、純粋な学びの思い出である。

 

 今回は「かっこいい」部門、「かわいい」部門、「一味ちがう」部門に分けて、良い名前をしている元素を表彰していきたい。まずは「かっこいい」部門、ノミネートはこちらである。

 

「かっこいい」部門ノミネート

Ndネオジム

Pmプロメチウム

Pdプラセオジム

Paプロトアクチニウム

Wタングステン

講評:

 「イウム」というおなじみの語尾を縮めたような言いかたをするネオジムはかっこよさの湧き出るツボを押さえていると言わざるを得ない。元素記号と元素名の由来が違うため、とくべつに名前を覚えないといけないタングステン周期表のなかでひときわ異彩を放っていると言えるだろう。

 しかし、今回の受賞者はPaプロトアクチニウムとしたい。「プロト」とつくのが封印されて「まさかこんなものに頼ることはないだろうが…」と伏線を張られながら、いいところで大活躍する試作機みたいでドラマティックである。

 

「かわいい」部門ノミネート

Laランタン

Teテルル

Seセレン

Neネオン

Tmツリウム

講評:

 今年の「かわいい」部門、このなかからどれかを選べというのが不可能に思えるほどそれぞれに個性的なかわいい名前を持った元素が揃っている。ランタンやネオンは正統派という感じがするし、テルルやセレンには「かわいい」とはいっても媚びのない、芯の強さのようなものが感じられる。ツリウムはきっとツンデレでしょう。

 選びようがまったくないので、個人的な好みを押し出したい。2020年度かわいい元素ランキング一位はツンデレのツリウムです。

 

「一味ちがう」部門ノミネート

Atアスタチン

Ybイッテルビウム

Vバナジウム

Xeキセノン

Sbアンチモン

講評:

 「一味ちがう」と紹介された状態で「一味ちがう」度をアピールしなければいけないのは端的に言って不幸である。つぎに出てくるものがいままで出てきたものとなんらか共通している、という暗黙の了解があるときにこそ「一味ちがう」ものは輝くのである。

 そんな酷な「一味ちがう」部門の廃止を僕は毎年毎年提言していたが、審査員に選ばれてしまった以上、今年も心を鬼にして考えなければならない。力の差は歴然で、やはりXの称号を身に宿しているキセノンを選ぶほかないだろう。そもそも希ガス元素という珍しさのアドバンテージを持っているうえにXから始まるとなれば、どんな変わり者でもひれ伏すしかない。優勝はキセノンです。

 

 

*1:その当時までに命名されていた112番の元素記号「Rg」レントゲニウムまでのこと。それ以降に命名された元素のことはあまり知らない。