Pomegranate

 

 ザクロ、という意味の英単語らしい。もちろん知らなかったし、数日後に再生どころか再認できるかも怪しい。もしかしたらこれ以降二度と出会わない語かもしれない。

 

f:id:kageboushi99m2:20191110164855p:plain

いらすとやのザクロのイラスト

 実家から送られてきたというザクロを同居人からひと切れもらったので、人生で初めてザクロを食べた。食べるどころか見るのもはじめてで(たぶん沖縄にザクロがなかったからだと思う。未体験のものがあったとき「それは沖縄にはなかったからだ」と沖縄のせいにしてしまうことが多いので、改善しないといけない)、初見ではどうやって食べればいいのかもよくわからなかった。これほどアフォーダンスがない果物も珍しいと思った。

 

 同居人のレクチャーを受けて食べてみたところ、普通においしかった。果実を割るとなかに小部屋があって、赤いつぶつぶがラップのような透明な膜にくるまれて入っている。この透明感のあるあかい粒を食べることになるのだが、なかには粒とほぼおなじ大きさの種が入っていて、この種は吐き出すことになる。可食部はほんとうにすくない。(「種衣」という名前で呼ばれている部分を食べていることになるらしい)味はすっきりとした酸っぱさと甘みがあって、さらにマイナー果物によくある変な風味とかもなくて、かなりおいしいのだけど、なかなかリラックスして食べるのは難しい果物だった。

 

 食べ終わったあと、せっかくなので、ザクロについていろいろ調べてみた。前掲した英語のつづりなどを含め、いろいろなことが分かった。食用というよりは観賞用として利用されることも多い植物だということ。イランが主要な産地で、ザクロという和名もザグロス山脈から来ているという説があること。花はタコさんウィンナーに似ているということ(https://love-evergreen.com/evergreenpost/post/10118)。鬼子母神伝説に登場した関係から、実は人肉の味がすると言われているということ(もちろん実際には、すくなくとも僕の知っている人肉の味はしなかった)。

 

 ザクロの実を煮詰めたグレナデン・シロップというシロップがあって、カクテルの色付けなどに使われる。昔それをよく飲んでいたことがあった。そのままじゃないですよ。友人の家に友人がまったく使わないグレナデン・シロップがずっと置いてあったので、泊まりに行くたびによくお酒を作って飲んでいたんだった。ウォッカに炭酸水を注いで、そのあと、そこに沈殿するようにグレナデン・シロップを入れると、赤いグラデーションがきれいなお酒になって、それがけっこう好きだった。きれいなのは見た目だけで、味はかなり禁欲的だった。2~3年かけてシロップを飲み切ったような気もするけど、勘違いかもしれない。

 

 市販のグレナデン・シロップにはザクロの果汁はほぼ使われていないらしいけれど、でももしそれも含めていいのであれば、ザクロ未体験というのはじつは嘘で、これはザクロとの二度目の交わりだったらしい。三度目はあるのでしょうか? 今後の人生に期待をしている。