The High Diversのことを教えたくない

 

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The High Divers (公式ホームページ)

 

 最近、The High Diversに夢中になっている。サウスカロライナ州チャールストンのバンドで、ということはBand of Horsesなどと同じ土地の出身ということになる。これは本当は教えたくない情報だが、(おそらく)まんなかにいるふたりが夫婦で、曲によってはデュオでボーカルを取ったりする。

 

 さすがはアメリカ南部っぽい、暑苦しく憂いを帯びたシリアスな曲を特徴としている。しかし、The High Diversの良さはそれだけではない。ここから先はあまり教えたくはないのだけど、このバンドは、アンサンブルが素晴らしいというか、それぞれのタイミングで同時に鳴っている音が見事に調和していて、とても美しい。たとえば、この曲のイントロだけでも聞いてみてほし……、くはない。

 

 歌うようなベースのフレーズに重ねて、全員で3回鳴らす和音が美しいでしょう? イントロが終わってもそのパターンは続いていて、ボーカルが声を張り上げる瞬間に重なるタイミングはさらに美しい。メロディーメーカーと言うような感じのミュージシャンではないとは思うのだけど、いろいろなところに撒かれた音楽的な仕掛けや、どこでどう盛り上げるかをコントロールしている感があって、部分的なフレーズではなく曲全体として良いものを作っていると思う。

 気持ちいいタイミングで入ってくる、吹きすぎない禁欲的なトランペットも非常に素敵。とっても丁寧で良いバンドだなあと思う。

 

 手数も豊富で、こういうようなドラムとベースの、なんと言っていいのかこういう感じを言い表すような言葉を知らないのでもうこういうようなとしか僕には言えないが、とにかくこういうような要素も、厚めのフォークロックに落としこんで調理している。本当にこの曲までは教えたくなかった。

 ただ、どうせ聞くならうまく探して、このAudiotreeのライブをフルで聞いてもらったほうがこの曲の感動は大きいかもしれない。何曲か先に聴いて、とつぜんこの曲が流れてくるとかなり感動する。いままでの曲調から掴んだバンドのイメージからすると意外な入り方をする曲だなって最初は思うけど、それが進んでいくにつれてなんとなくやりたいことが見えてきて、クライマックスでは彼らのスタイルと調和して高みへ行く。

 

 一曲だけお試しで聞くんだとしたらこの曲も捨てがたい。Fleetwood macの全盛期のような風格のある始まりかたをして(でも似すぎているのでひょっとしたらオマージュなのかもしれない)、サビでは遠くのほうから聞こえてくる妖精の歌みたいな木琴風のキーボードが素敵すぎる。ちょっとDQ5の妖精世界の曲を思い出す。そのキーボードのフレーズが曲のクライマックス付近でべつの音色(雪みたいな感じ)になるところの展開がとても良い。アウトロは拡大されていて、気持ちのいいセッションが聞ける。教えたくないことをここまで教えたのだから、ぜひ聞き届けてほしい。