人類の歴史のなかで一番面白いやる夫スレはなにか? それは、「雪華綺晶の天空離宮殿」である。
AAをずれずに表示させるスクリプトの(おそらく)せいで、リンク先のページは一部の環境ではあまり快適には見れないので注意。
ある町の空に、ぽつんと浮かぶ浮かぶ宮殿があった。宮殿への交通手段はなく、いままでそこに行った人は誰もいないという。有名な探検家のやらない夫と、とくに定職にはつかず、かわりに町の人々に謎を振りまくという活動をしている「謎のやる夫」、この二人がある日出会い、バディを組んで天空の宮殿へ行くために冒険をはじめる。というお話。
やる夫スレには独特の恥じらいがある。とくに、もともと人を煽るために生まれたAAキャラを使って作っている読みものなんだから、細かいところは気にしないで、ひとつの作品というよりは掲示板を使った暇つぶしだと思って読んでね、という雰囲気がまだ濃厚だった2011年ごろまでの作品にはその恥じらいが顕著だったように思う。そして、素晴らしい作家には、自分の頭のなかでつくった世界を外に出すときに、そういった種類の恥じらいを必要とするタイプのひとがいる。
256 名前: ◆jG/Re6aTC.[sage] 投稿日:2010/09/12(日) 22:05:56 id:edrtm5lA
すみません、突然家に殺人鬼が上がりこんできました
30分ほど時間をください
「雪華綺晶の天空離宮殿」は、ストーリーの本筋とはすこし離れたところや、あるいはお話とはまったく関係のない投下の合間で、とてもコミカルな展開をする。とくにこの殺人鬼襲来の夜はいまでもファンの間では語り草になっている。
258 名前:どこかの名無しさん[sage] 投稿日:2010/09/12(日) 22:17:18 id:gCqUf9/s
しかし>>1は凄いな、30分あれば殺人鬼に対処できるのか。
260 名前: ◆jG/Re6aTC.[sage] 投稿日:2010/09/12(日) 22:36:49 id:edrtm5lA
説得を続けた結果、殺人鬼は隣の家に行ってくれました
262 名前:どこかの名無しさん[sage] 投稿日:2010/09/12(日) 22:37:21 id:gCqUf9/s
それはそれで駄目だろww
おかえり。
住人もとても優しい。
しかし、そのようなコミカルさの掘の内側で、お話は本当に面白い。世界観や設定にはワンダーの感覚があふれていて、物語のひとつひとつの想像力がオンリーワン。知らない道を歩くように楽しくスクロールできる。
楽しいだけではない。物語は緊張感をもって展開し、いくつかの素晴らしいシーケンスで激しいカタルシスとなって結実する。たとえば、怪盗からすが追いつめられて、七つの子を歌う場面。
どこからって・・・ そりゃあ・・・ 僕の口からに・・・決まってるだろ・・・
追いつめられて七つの子を歌うという展開をどうやって思いついたのかはわからないが、いままでにほかの作品では見たことのない凄みをもたらしている。
そしてなんといっても、天空の離宮へ向かうための最後のピースである、とある人物へ会いに行く長いエピソード。探検家としての名誉のため、ほかのすべてを犠牲にしてでも離宮へ向かおうとするやらない夫と、そこまでの気持ちがあるわけでもなく犠牲への想いとの連れの熱意との板挟みになるやる夫。このふたりの関係性の綱引きはシンプルではあるがしっかりと書かれていて物語になっている。そして、「価値のあるもの」と引き換えに、修行なしでもすさまじい力を発揮できる「邪流剣術」を使った戦いと、その意外な結末。
ほかの素晴らしいインターネット読み物と同様に、この作品も未完のまま終わっていて、つづきが更新される望みはまったくない。それでも、天空の離宮へ到達するところまでは進んでいるし、そこまででも十分に読む価値がある。
昔夢中になってて、最近ひさびさに読みかえしたけれど、やっぱり素晴らしかった。野生の天才。