1日を24時まで過ごして
美しいくらいの僕たちの失速
ポケットの中には
使いそびれた20代の宝石
3まで数えたところで
止まっちゃったカウントダウン
取り返しのつかない
祭りの失敗
花火のない河川敷を
友達かたっぱしからかけた
繋がらない通話の
呼び出し画面を
車のドア開けっぱなしで
みつめている
僕たち
1日を24時まで過ごして
美しいくらいの僕たちの失速
ポケットの中には
使いそびれた20代の宝石
3まで数えたところで
止まっちゃったカウントダウン
取り返しのつかない
祭りの失敗
花火のない河川敷を
友達かたっぱしからかけた
繋がらない通話の
呼び出し画面を
車のドア開けっぱなしで
みつめている
僕たち
最近はインターネットをたくさん見ている。とくに先日、となりの席の上司が「トリチウム水が放出されるらしいぞ」と話しかけてきたのに対し、「やばいっすね!」と答えてからは、たくさん見ている。
この処理水ポータルサイトというページがとても良かった。書かれていることに、書かれているのとは別のこと、それ以上のことやそれ以下のことを伝えようとしているような含みやニュアンスが感じられず、(事実レベルで嘘が書いてあればそれまでだが)ある程度、批判的読みかたの緊張を解いて読むことができた。
ここにたどりつくまえにいろいろなところの記事を読んだりもしたのだけれど、やっぱり、書かれていないように思えるところや書かれすぎているように思えるところが気になり、この公式サイト(?)を越えるようなものはなかったと思う。
「情報を過不足なく書いて発表しておく」というところに職責が発生するようなセクターの文章は、へたな、……どころかたいていのメディア(この人たちは書いて「発表する」というよりは「読まれる」ところに職責が発生する)より良いことが多いな、とこの1年はずっと思っていた。
そのポータルサイトからリンクされているこの汚染水対策会議の記録などはほんとうに面白かった。なんせ、国家的事業の方針を決める大事な会議。いろいろなところから情報を集約して、それをその場にいる全員がわかるようにまとめて、解説して、「理解り」が発生したうえで、方針を決めなければいけないので……、
信頼できるソースのある情報がわかりやすい解説付きで展開されることになる。これだけの「知」の量があるスライド、大学の教養課程以降ひさしぶりに観た。
しかも完全書きおこしの議事録までついている。こんな細かいところまで書かせるなんて、ブルシット・ジョブじゃん…! って、議事録を書かされる側になったときは思って最強の手抜き議事録を作ってしまうんだけど、いざ読む側にまわると、完全に書かれた議事録って神ですね。ほんとうに黄金の価値があるドキュメントだ。だって、授業が完全に書きおこされているノートを友達から借りているようなものですからね。
プロセスの民主的検証のためにあるものだとは思うけど、シンプルに知的好奇心が満たされる。
トリチウム水の放出に至った経緯や、トリチウム水の性質に関しては疑問に思うところがいくつかあって、メディアの記事ではなかなかそこまで掘り下げたものがなくて困っていたのだけど、この議事録と資料をあたりをつけて読むことでだいたい納得することができた。
ちょっと今回の決定に納得がいっていない人や、原子炉の後始末に知的な興味がある人には、とてもおすすめのサイトです。
なんだったか忘れてしまったけれど(たまたまいま忘れてるだけとかではなく、まったく思い出せる手ごたえがない)、なにかで、莫言とマジック・リアリズムの話を読んだことがある。
莫言はマジックリアリズムで小説を書いていると言われているが、たとえば『赤い高粱』の冒頭部分を読んでみてほしい。おどろおどろしい、世にも奇妙な、ふつうでは考えられないことが起きているかのような描写がされているが、それは文体の上だけのことで、実際にそのページで起きている内容はいたってリアルな出来事である。
一方、ラテンアメリカの作家が得意とするとされているマジック・リアリズムは違っていて、「摩訶不思議な魔術的なできごとを、まるでそれがリアルな出来事をふつうに描いているみたいな文体で書く」ものである。莫言がやっていたのはマジックリアリズムの逆だったんです。
……というような内容のことが書かれていた。
莫言さんのやり方もそれはそれでおどろおどろしく面白いのでOKという論の運びかただったけれど、読んだときに感じた個人的な好みとしては、やっぱりオリジナルなマジック・リアリズムのほうが良いんじゃないかな、と思った。
「なんでもない出来事を、文体でコーティングして、読むべき価値がある物事のように見せる」ということよりも「やばい出来事を、ふつうのテンションで、それ以上の意味や感触をつけ足さない透明な文体で書く」ということのほうがかっこいいことのように思えたのである。
ただ、文章を媒体として広告主に売る、ということを考えた場合、文体とか書きかたとかスタイルで意味や感触をうまく足せるほうが、商材としての使い勝手がいい。このPR記事も、すごく面白い出来事がとても意味ありげに書かれていて、書いているひとの技術をとても感じる。
私は先日、ひとりの男の人と一日を過ごした。
ハンバーグとエビフライの定食を食べて、街をぷらぷら。公園で喋って、銭湯に一緒に行って。そして最後の別れ際、カーディガンをプレゼントしてもらった。
これはたぶん、デートだと思う。
ふつうにデートだと思う。ただひとつ、ふしぎなのは、私もその人も、お互いの名前を一切、呼ばないこと。この先、また会うかどうか、わからないこと。そして、私には帰る家があるけれど、その人にはないということ。
「私には帰る家があるけれど、その人にはないということ」。……起きている事実に、これだけきれいに感触を乗せられる技術。
本当にすごいのだが、同時に、このスタイルで書くことができてそれでよいPR記事が書けることの、裏の残酷さを感じる。
そのあとに、「演劇制作のリアルでブラックな日々」を読んだ。演劇製作の現場の、そんな摩訶不思議なことがまかり通るんだ、となるような出来事が、
忙しい時に出来なかったことをじっくり丁寧に時間をかけてやっています。
この日記を書くことができたのも、時間が出来たからですし、書くことによって自分を客観的に見つめることができました。
鬱の人に上手く書くことではなく「ただ書くこと」を薦めていた坂口恭平さんに心から感謝いたします。
以前何度も書こうと思いながら書けなかったのは、上手く書こう、格好悪いことはしたくないというつまらないプライドのためでした。
ここまで堕ちて(笑)、無職無収入になって、なにもなくなってしまうと、もう恥ずかしいことも少なくなりました。もちろんプライドはありますが、今まで恥だと思っていたことが恥ずかしいとは思わなくなりました。
私はプライドの使い方を間違っていたのでしょう。
……と最終回で述懐するとおりの、内容にあまりつけ足すことのない文体で書かれている。
いまのところは、読み物として*1面白いのは、個人的には「演劇制作のリアルでブラックな日々」のほうだと思うし、どっちか1つリンクを踏むなら、それをおすすめします。
*1:ここであげた2つのnoteは単なる読み物として以上のものとして受け止められることを想定して書かれていると思うので、「読み物として」に縮減しちゃうのはあまり読者として適切な態度ではないが。
愛知県岡崎市にある私立校、岡崎城西高校の同期メンバーを中心に結成された6人組YouTuber「東海オンエア」は、現在では日本でも屈指のトップオブトップクリエイターである。
……そしてこの、東海オンエア。メンバーがほぼ僕と同じ世代*1なんですよね。同じ世代、ということはおなじ時代のおなじ文化を共有しているということがあり、それを題材にした動画などにはひどく楽しませてもらっている。今回は、同世代としてはちょっとグッときちゃう東海オンエアの動画をいくつかおすすめしたい。
ひとつずつ物に物をくっつけていき、それを互いにまわしあう。もう持ちきれなくなって、ギブしたひとが負け、という「塊魂ゲーム」をやったこの回は企画力が天才だった。どの世代にもいると思うけど、やっぱり同世代の天才は強めの応援をしてしまいますね。
この「塊魂」というのも、あの時を過ごしたひとならやったことはないけれど絶対に知っているはずで、ただ、とびぬけた名作ということで後世に残っているわけではなく、ちょっと世代の低い人は知らない、というものな感じがして美しい。
アニメやマンガでよく見る「氷系の能力者」が「相手を凍らせてそれを砕くと相手は粉々になって負ける」という描写はほんとうにそうなるのか? ……を検証した動画である。
この動画の同世代ポイントは、ゲスト出演となるそれぞれの「氷系能力者」たち。日番谷十四郎にめちゃくちゃ思い入れのないとしみつが自己紹介したあと、てつやのエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルが出てきたときめっちゃ笑ったと同時に、ちょっと恥ずかしがっているのを見て共感性羞恥してしまった。
同世代のひとがエヴァンジェリン・A・K・マクダウェルのコスプレをしていてセリフを言ってちょっと恥ずかしがっているのを見るの、めっちゃ鳥肌が立ちます。
「え? なにこれ?」って思うもの、といったテーマを設定し、それによくあてはまるものを実家から探してくるという動画である。実家、というのは東海オンエアのおもしろ長所ポイントで、実家絡みの動画には個人的にも好みなものが多い。その中でもすぐに思い出すのがこれだ。
同世代ポイントは、動画中盤でてつやが取りだす「ドラえもん超能力マシン」。これみたとき、そして効果音を聞いたとき、本当に懐かしくて死ぬと思いました。わあ!ネズミ!
ずっと僕これをずっと弟とやっていて、ネズミ叩きゲームは協力して(右4つのボタンと左4つのボタンを分担して)、記憶力ゲームは記録を競い合って遊んでいた。
この動画が公開された直後、弟から「観た」と連絡があり、とても懐かしい思いを共有した。そのあとの、これで遊ぶサブチャンネル動画も、堪能した。
「同世代の共有物」というほどメジャーなものではなかったかもしれないが……。
*1:僕は、虫眼鏡を除くメンバーの1学年下にあたる。
金曜日の夜から友達の家に2泊していた*1。なぜそのような運びとなったのかはよく思い出せないけれど、ずっとひとりで家にいることが常態化*2していたこの冬の生活習慣、……の終わり、ひとつのサイクルが終わりかけているということが可視化されて、個人的には悪くない選択だったように思っている。
2泊している間は、鍋をしたり、友人の好きなゲームの対戦配信を見たり、その交換条件のように、サッカーの試合を見たりした。エル・クラシコ*3と呼ばれている、サッカーの世界でもっとも有名な試合がちょうどこの週末にあったのだ。
そのあとはもう1試合、コンサドーレ札幌と鹿島アントラーズの試合を見て、それから家に帰ってきた。
その、家に帰ってくるまでのあいだに、弟から「面白人種差別のエピソードトークできなくてごめんな」というLINEがやってきたのでちょっとびっくりした。弟とはふだん密に連絡を取っているというほどではない*4のだが、最近は以下のような事情で、弟とすこしLINEでやり取りをしていた。
・弟がカナダ留学を控えている。
・母曰く、弟が「遅れてきた反抗期(?)」らしく、母の言うことをあまり真剣にとらえてくれない。
・僕は弟とは良好な意思疎通ができている。
・母の伝えたい、「カナダではアジア人差別に気をつけなさいよ」を代わりに言ってほしい、と頼まれた。
「面白人種差別のエピソードトークできなくてごめんな」って何……? 詳しく話を聞いてみると、留学会社とトラブルがあり、出発を明日に控えた今日の段階で留学が突如キャンセルになったのだという。
「なんかよ」
「寮を指定してたのに」
「昨日ホームステイって言われて」
「クソだるいと思ってキレ電話したら」(留学会社に)
「スーパースーパー気持ちわかるって言われて」(留学会社の担当者に)
「行かんってなった」
まあ、人生にはそういうこともあるのでしょう。とりあえず、「母的には、じつはちょっと安心、って感じじゃないの?」って言ったら、「多分な。『カナダ行かんことになった』って言ったら、『いいんじゃない? 自分の好きなほうで』って言いながらミライモンスターみてた」と返事が来た。
ミライモンスターというのが、ちょっと象徴的で面白かった。
僕も含めて、おたがいに深入りすることをそんなにしない、できない家族なのかもしれないが、……そのぶん、誰かをコントロールしようとしたり、「もういいや」って言って切ることはない家族だとも思う。たぶんいま一番未来が見えない時期だとは思うが、弟にはまあ深く考えず、達者でいてほしいと思った。
*1:友人の家に2泊することの良さについては「人の家に泊まるのが好き - タイドプールにとり残されて」で述べた。
*2:なにもない日は家から出ない、ということは「青砥~立川~青砥 - タイドプールにとり残されて」という回の冒頭で少し触れた。触れたところ、その部分がはてな公式に切り抜かれてしまい、普段何もない日は外出しないという soudai @kageboushi99m2さん、と呼びかけられてしまったのが恥ずかしかった。
*3:エル・クラシコについては「スペクタクル、エル・クラシコ - タイドプールにとり残されて」で書いた。
*4:密に連絡を取り合っていた時期もあり、それについては「弟1と毎日交互に弟2にラインを送っていた時期 - タイドプールにとり残されて」に詳しい。